2021年

会社設立前から税理士に相談しておく方がお得な4つの理由

会社経営の経験がない創業者にとって、経営知識不足という課題をカバーしてくれる心強い存在が税理士です。特に創業支援に強い税理士であれば、創業税務のみならず創業融資や支援制度など多くのアドバイスをもらえます。今回は、創業前から税理士に相談する具体的なメリットを4つに絞りお伝えしていきます。


節税や補助金など創業支援情報を提供してもらえる


 創業に強い税理士であれば、自社に合った創業者向けの支援制度や補助金や助成金などの様々なアドバイスをしてもらうことができます。創業支援制度は数多くあり、複雑な部分があるため、自社に適合する制度を見つけるだけでもかなりの手間がかかりますが、創業に強い税理士であれば自社に合う制度をアドバイスしてもらえる為、時間と労力を大幅に省略できるメリットがあります。

 例えば、「特定創業支援事業」をご存じでしょうか?特定創業支援事業とは、自治体が行う創業支援で、これを受けることで証明書が交付されるものです。この証明書があれば会社設立費用である登録免許税(株式会社だと15万円)が半額になったり、補助金の申請要件を満たせることでタイミングよく補助金申請できたりするなど、様々なメリットを受けることができる制度です。法人設立前に税理士に相談しておくことで、この特定創業支援制度を活用した法人設立と補助金申請の支援まで一気に目途がつきます。また創業計画の作成支援を受け、創業融資と補助金申請に重複活用することで、効率的な創業スタートを切ることが可能となります。

 また税理士に、法人税・消費税・所得税・住民税・社会保険料などの総合税務対策を相談しておくことで、法人設立時から節税メリットを受けられるように定款設計をすることなどができます。場合によっては、相談した結果としての節税額が税理士費用を大幅に上回るケースもあります。なお、相談のタイミングが遅くなる節税の打ち手が狭まってしまうため、できれば創業の3ヵ月前くらいから税理士に相談することが望ましいと言えます。


創業融資と資金繰りの見通しをいち早くつけられる

 法人は設立することが目的ではなく、維持発展することが目的です。そのためには、資金繰りが大切です。黒字倒産という言葉がある通り、黒字を出していても資金がなければ会社は継続できません。特に創業時の資金繰りとしては、①創業融資を十分に受けられるのかどうか、②創業1年目の資金繰りが続くのかどうかの2点が重要となります。

 まず創業融資についてですが、単なる企業概況書等だけではなく、創業計画(文章)と数値計画の2点をしっかり作成することが重要です。この2つがあることで審査担当者に十分な情報を提供でき、審査合格の確率が格段に高まります。創業計画(文章)は金融機関担当者が読みやすい文章となるよう、一定の専門用語を使えているか・適切なポイントを抑えられているか、について税理士に校正してもらうのが望ましいです。

 また数値計画については損益計画のみならず、資金計画も必要です。なぜなら損益計画は黒字でも、資金計画まで予測してみると半年で資金ショートしそう…といった計画になっていることも珍しくなく、金融機関担当者からすると突っ込みどころになっていえう場面がよく見られるからです。その意味でも、税理士に資金予測をしてもらい、楽観シナリオや悲観シナリオを予測し、どのような売上だったら資金繰りがいつごろ破綻するのかなどを見通しておくことで、創業の撤退ラインが見えるようにしておくのがお薦めです。

 税理士に相談しておけば、資金が足りない予測だとしても、資本金や借入を増やすなどの手当てをし、創業の資金繰り対策を綿密にすることができます。実際に税理士としての経験としても、この予測キャッシュ・フローまで作成すると、ほっとした表情をされる創業者の方は多く、「数字で見通しを付ける」ことの重要性を感じる次第です。なお、消費税の課税事業者選択をする場合には、少なくとも課税事業者になってから2年間は免税事業者等に戻ることはできませんので、慎重なシミュレーションが必要ですが、創業3年計画を予測することで消費税の課税方式の選択についても見通しを付けることが可能になります。


銀行口座の開設にあたって支援してもらえる

 最近の問題として、新設法人が銀行口座を開設することできないという問題があります。振り込め詐欺対策など影響から、銀行の法人口座の開設審査が厳しくなり、設立直後だと法人口座が開設できないケースが多発しています。法人口座開設ができないと、取引上不便であるのはもちろんのこと、創業融資を受けようと思っても日本政策金融公庫からの創業融資が進まなくなる等のデメリットがあるので注意が必要です。

 上記ような場合でも、税理士が馴染みの金融機関支店長にあっせん紹介することで、丁寧に審査をしてもらえたり、税理士と相談しながら事業実態をアピールすることで法人口座開設の可能性を高めることができます。

 なお、最近では金融機関が自らインキュベーション施設(創業者を支援する目的で運営されるオフィス賃貸)を運営しているケースが増えており、ここへの入居を税理士があっせんしてくれる場合もあります。インキュベーション施設は東京都内でも家賃が4~7万円と市価の3分の1程度で入居でき、金融機関自体が運営しているため事業実態の把握がしやすく、法人口座の開設審査が通りやすいというメリットがあります。金融機関とのルートがある創業融資に強い税理士であれば、家賃費用と口座開設の問題が一気に解決し、税理士費用を回るメリットがすぐに取れることになるといえます。


どのような会社を作るべきか創業前に相談ができる

 会社設立と言えば専門家は司法書士ですが、司法書士の先生から、法人設立後を見越した会社形態や資本金や決算月の決定など税務面のアドバイスを依頼されることがよくあります。会社形態としては株式会社か合同会社で悩まれる方が多くいますが、中小零細企業にとっては経営管理や運営費用ではほとんど差異がない場合が多いと思われます。そうすると営業上の必要性や設立費用などを勘案して合同会社か株式会社かを決めると良いのですが、会社設立前の経営者では判断が難しいかと思いますので、税理士に相談しておけば専門家による適切な意見をもらうことができます

 また、資本金は創業融資を受ける際の自己資金のアピールになりますし、1期目の消費税の課税・免税の判定にもなりますので、自己資本の規模についても税理士に相談しておくと良いでしょう。決算月は主に消費税の観点から、免税事業者の適用期間を長くしたいのか、課税事業者を選択したいのか、どちらがメリットがあるのかによって決定することが多いです。こちらは創業の数値計画によって判断していくことになりますので税理士と一緒に数値計画を見ながら検討するのが良いでしょう。これらは定款記載事項であり、設立時資本金の額など、後から変更できないものも含まれますので、会社設立後ではなく、設立前の段階から相談しておくことが必要です。

 「自分には創業融資は関係ない」、「登記したら相談にいくつもり」と考えている経営者は少なくないですが、設立の少し前から税理士に相談しておくことで、しなくてい良い損をしないで済みます。創業に強い税理士であれば、積極的にアドバイスや情報提供をしているため、少なくとも創業の3ヵ月ほど前くらいには一度相談してみることをお薦めします。


無料相談承ります

 税理士法人山岸会計では上述のような会社設立前の段階でも相談に乗っております。初回相談は無料でお受けしておりますので、もし「無駄のない創業スタートを切りたい」というお気持ちがおありでしたらお気軽に一度ご連絡頂けますと幸いです。

 ※相談したからといって弊事務所に顧問税理士を依頼する必要はございません。

税理士から見た定款作成時の注意事項TOP5

 定款の雛形はすぐ手に入る反面、どこに注意すべきか分からず、雛形をそのまま使ってしまっている経営者も少なくないのが実状です。しかし、定款作成には気をつけないと後々に影響を与える落とし穴が存在します。本記事では、税理士の目線から、税務や経営に支障がない定款をつくる上で気をつけるべきポイントについて解説します。


1. 株主総会の招集期日は決算日の翌月から3カ月以内

 定款に記載する定時株主総会の招集期日について、事業年度末日の翌日から「2ヶ月以内」に招集すると記載する例があります。実際に世の中に出回っている定款のテンプレートにもそうなっているものが散見されます。しかし、法人税申告書の提出期限の延長の特例申請を届出するためには、定時株主総会の招集を事業年度末の翌日から「3ヶ月以内」と規定しておく必要があります。


 上記をもう少し詳しく説明すると、法人税申告書は、原則として決算日の翌月から「2ヶ月以内」に提出することが必要です(法人税法74条)。しかし「申告期限の延長の特例申請」を届け出ることで申告期限を決算日の翌日から「3ヶ月以内」に延長することができます。つまり、申告期限を延長しておくことで、万が一2ヶ月以内に決算申告ができない事態が生じたとしても、3ヶ月以内に提出すれば無申告になることはなく期限内申告の扱いとなります。したがって、念の為に保険をかける意味でも、申告期限の延長の特例申請を届出ておくことがお勧めという訳です。


 申告期限の延長特例申請は、定款で定時株主総会を決算日の翌日から「3ヶ月以内」に招集すると定めた場合に認められるものですので、定款で定時株主総会を決算日の翌日から「2ヶ月以内」に招集すると記載した場合には認められません。法人税の確定申告は提出期限を超えてしまうと、無申告加算税が賦課されたり、青色申告承認が取り消されたりする場合もあるため、申告期限の延長の特例申請を届出しておくのが望ましいと言えます。したがって、申告期限の延長の特例申請を届出るために、定款での定時株主総会の招集期日を決算日の翌月から3ヶ月以内と記載するように注意することが必要になります。


 因みに、原始定款で2ヶ月以内となっていた場合でも、株主総会を開催し定款変更をすることができます。

※定款変更のためには株主総会での特別決議(議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の多数で決議)が必要となります。申告期限特例申請の届出期限は、最初に適用を受けようとする事業年度終了の日までとなりますので、期中で対応すれば当期から延長が可能です。


2. 発起人の株式数は過半数で議決できるように配分

 定款の発起人欄には、発起人の氏名、住所および発起人が設立に際して引き受けた株式数を記載します。この株式数は、今後の会社運営の基礎となる重要な株主総会での議決権割合になります。深く考えずに共同創業者間で均等に配分してしまうケースが少なくないですが、税理士目線では、複数人で株式を引き受ける場合には、必ず過半数による議決ができるような議決権割合にしておくことが望ましいと考えます。


 例えば、株式を2名で引き受けて設立する場合、仲良く2分の1(50%)ずつ株式を発行するケースが考えられますが、この場合には、法人で重要な意思決定をする際に意見が揃わない限り、常に膠着状態になってしまい何も決められない会社になってしまう恐れがあります。膠着状態に陥ると、例えば、いつまでも決算承認ができず法人税申告書を税務署に提出できない無申告状態に陥ったり、重要な契約締結をしたくても意思決定できないまま相手を待たせてしまいビジネスチャンスを逃してしまうなどの不具合が発生しますので、そういった点を懸念点と捉える銀行や投資家も存在します。

 上記を踏まえると、必ず誰かが過半数の51%以上を持つような議決権割合にしておくことをお薦めします。また、4人で株式を引き付ける場合にも4分の1(25%)ずつ分け合うと同じ事態が発生してしまいますので、少なくとも1名については26%あるいは51%を持つように工夫することが望ましいです。


3. 消費税免税を考慮した決算月を選択する

 定款では、事業年度として毎年〇月〇日から翌年〇月〇日までと毎期の決算月を規定します。法人設立時に消費税の免税事業者の期間をできるだけ長く適用したい場合には、この決算月の設定に慎重な検討が必要です。

 具体的には、決算月の設定にあたって以下のような法人設立時の免税要件を満たす必要があります。

(1) 1期目は資本金が1,000万円未満であること

 法人の場合、資本金1,000万円未満で設立した場合には、1期目は免税事業者となります(2期目については別の要件を満たす必要があります)。この基準は、事業年度開始の日における資本金の額が1,000万円未満であるかどうかで判断しますので、期中に増資しても影響はありません。ただし、2期目の事業年度開始の日(期首)において資本金の額が1,000万円以上の場合には2期目から課税事業者になってしまいますので注意が必要です。

 なお出資時には、出資金の半分までを資本金ではなく資本準備金とすることができますので(会社法445条2項、3項)、資本金を900万円未満とし、資本準備金を500万円などとして設立出資することで、消費税は免税で設立することが可能です。


(2) 2期目は更に特定期間等の要件を満たすこと

 2期目については期首の時点で資本金が1000万円未満であることに加え、以下の要件を満たした場合に免税事業者となります。


① 特定期間における課税売上高又は給与等支払額が1000万円以下であること

 特定期間とは法人の場合、事業年度開始の日以後6ヵ月の期間を差します。即ち「上期」の期間をいいます。つまり創業1期目の最初の半年において、課税売上高が1000万円以下の場合には2期目も免税事業者となります。仮に課税売上高が1000万円超となっても、同期間の給与等支払額が1000万円以下の場合にはやはり免税事業者となることができます。したがって、2期目が課税事業者になってしまうのは、1期目の上期において売上高及び給与等支払額の両方ともが1000万円超となった場合となります。実務的には売上高は外部との取引のため調整が難しいですが、給与等支払額については内部の人件費ですので、場合により支給水準や支給時期を考慮して設定することで上期で1000万円以下に調整できる余地があります。

 なお給与等支払額については、「支払った」段階でカウントしますので、例えば上期の賞与を下げて下期賞与の回したり、給与ではなく創業当初は業務委託を活用するなどして、人件費の支払額を抑える方法などが考えられます。


② 設立1期目を7ヵ月以下にする

 上記の事情は理解しているものの、設立1期目の特定期間(上期)の課税売上高及び給与等支払額がいずれも1000万円超にならざるを得ず、そのままだと2期目が課税事業者になってしまう法人もあります。その場合には、設立1期目の事業年度を7ヵ月以下とするように、決算日を調整して設定することで、2期目を免税事業者とすることができ、免税事業者の期間を12ヶ月伸ばすことができます。例えば2021年4月15日に法人設立した場合であれば7ヶ月後は11月14日となりますが、通常はその前月末としますので、決算日を10月31日と設定すれば、設立1期目は6ヶ月+α日ということになり、7ヶ月以下となりますから2期目も免税事業者となります。仮に決算日を11月31日にした場合には設立1期目が7ヶ月+α日となり7ヶ月超となりますので、特定期間において判定し、2期目から課税事業者になってしまう可能性が出てきます。

 以上から、定款で決算日をうまく調整することで、7ヵ月+12ヵ月の19ヵ月間免税事業者になることが可能となります。創業1期目を7ヵ月以下とすることで特定期間での判定がなくなり、上記①の判定しなくても良いということになります。これは課税売上高や人件費が大きい法人の対応となりますので、対策による消費税免税の効果は大きいことが想定されます。


※あえて課税事業者を選択するケースもあります

 消費税免税の場合には、納税も還付もありません。しかしながら、不動産賃貸業を始めるため設立1期目から大きな不動産購入がある場合には、消費税が還付になる可能性があります。また輸出業の場合にも売上が免税となる関係から、消費税が還付になる可能性があります。そのような法人の場合には、設立1期目からあえて課税事業者を選択することができます。この課税事業者選択をした場合には一定期間免税事業者に戻ることができませんので、自社が免税事業者で良いのか、あるいは課税事業者で良いのかについては、設立1年目のみならず、設立後数年間の事業計画を策定したうえで、どちらが有利なのか慎重に判断するのが良いでしょう。


4. 本店所在地は資金調達を考えて決める

 本店の所在地は、定款の絶対的記載事項ですが、登記事項にもなります。定款では「東京都港区」など最小行政区までで良いですが、登記簿には丁目番地まで記載されます。登記簿は公開されますので自宅を本店所在地にした場合には登記簿にそのまま載ることになります。また、最近ではバーチャルオフィスやコワーキングスペースでも登記OKとして利用できる場合があります。


 ここで幾つか落とし穴があります。1つはバーチャルオフィスやコワーキングスペースで登記した場合です。創業の資金調達を日本政策金融公庫から受けるには、民間金融機関の口座登録の必要となりますが、バーチャルオフィスやレンタルオフィス、コワーキングスペース等では民間金融機関の口座開設が難しいケースが多く、法人設立しても創業融資を受けることができない事態になりかねません。2つ目は登記した自宅が賃貸の場合、賃貸契約において法人不可(ビジネス利用禁止)の物件の場合があります。その場合に自宅を本店所在地にして登記をしてしまうと契約違反となり表札も出せず郵送物が届かないなどデメリットが発生する可能性があります。

 したがって、本店所在地の設定では、資金調達やその後のビジネス展開を踏まえて、どの物件で本店をするのか検討すると良いでしょう。オフィス賃貸物件を借りるほどでもない場合のおすすめとしては、金融機関が運営している創業者向けのインキュベーション施設があります。こちらは賃料も相場の半分以下である事も多く、また金融機関のすぐ隣などにあり口座開設や本業支援などのほか、入居することで東京都創業助成金などの申請要件も満たせるなどのメリットがあります。単純にオフィス賃貸物件を探して入居することも良いですが、もし条件が合えば金融機関インキュベーション施設も検討してみる価値があるのではないでしょうか。


5. 取締役会は必要なければ設置しない

 法人の機関として、株主総会の他に、取締役会を設定することが可能です(会社362条)。取締役会はすべての取締役で構成するもので、代表取締役の選任や重要な業務執行の決定をする機関ですが、取締役会を設定するかどうかは自由となっています。取締役会は「各取締役の職務執行が法令・定款に適合しているかを牽制したり、業務の適正を確保するために存在し法人の信用度が増す」などと教科書的に言われますが、実際には中小企業においては、そのような内部牽制を必要としない法人が多く、取締役会があれば必ずしも会社の信用度が必ず増すものでもないというのが実状なため、設置するメリットがあるケースは少ないと考えられます。

 逆に、取締役会を設定するデメリットとしては、①必ず取締役が3名以上(会社法331条5項)及び監査役を1名以上(会社法327条2項)設置しなければならないため、役員として4名以上が必要であり、それらの役員報酬の支払を要することになります。また②代表取締役の選任において、各取締役の過半数で決することになりますが、代表以外の2名が結託することで、容易に代表取締役を変更させられてしまうリスクがあります(実際に、中小企業において、代表取締役以外の取締役が結託して反旗を翻し、代表取締役が変更となった例は少なくありません)。中小企業においては機動的かつ安定的な経営を重視し、あえて取締役会を設置することなく、代表取締役へ業務執行を一任する体制でも問題ないケースが多いです。


 以上、5つの注意事項についてご説明しました。何も考えず定款の雛形をそのまま使うことで決算日や申告期限、経営安定性にまで課題が生じることがあり得ることが分かってもらえたのではないでしょうか。決算期や株主構成、役員構成などの戦略は、会社毎にケースバイケースとなることから、創業に強い専門家によく相談しながら、制度をうまく活用して頂きたいと思います。


無料相談承ります

 税理士法人山岸会計では上述の定款作成時のような会社設立前の段階でも相談に乗っております。初回相談は無料でお受けしておりますので、もし定款作成に専門家の目線を入れたいというお気持ちがおありでしたらお気軽に一度ご連絡頂けますと幸いです。

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タイプ別顧問税理士の選び方

 税理士には様々なタイプがあり、アンマッチな税理士を選んでしまうと会社がつぶれてしまう危険すらあります。重要な税理士選びのために、タイプ別の税理士の見極め方と、そのメリット・デメリットを4つに絞ってお伝えします。


 税理士の分類 

1.丸投げ記帳代行型

2.お客様は神様型

3.経営アドバイス型



1. 丸投げ記帳代行型~一見素晴らしいように見える~


(1)税理士の6~8割は記帳代行型

 税理士の6~8割はこの記帳代行型です。したがって、税理士を探そうとしたらすぐに見つかります。「面倒な会計記帳は私の方請け負います」と言ったり、「会計記帳は税理士に丸投げで大丈夫です!」という説明をしていれば、このタイプとなります。記帳を丸投げできるというのは一見良いようにも見えますが、デメリットもあるので注意が必要です。


(2)税理士に丸投げ記帳代行がなぜ多いのか

 そもそも、なぜ税理士に丸投げ記帳代行型が多いのでしょうか。理由の1つ目は、税理士にとって難易度は低い業務である一方で、一定程度稼げるからというのがあります。世の多くの中小企業の経理は、毎月繰り返しの部分が大半ですので、会計記帳は手間こそ掛かれど難しくありません。したがって、税理士としてはパートの方を雇って当該作業をお願いすることで、一定の利益を自身が手を動かす事なく確保できるという訳です。

 2つ目の理由は、企業の顧問税理士への依存度を高める為、と言われています。記帳代行を実施している税理士は「会計税務は難しいので私に丸投げしてください」と言って請求書や領収書を預かってしまいます。そうすると、会社側は資料を手元に置かなくなる為、自社での経理業務はデキなくなり、顧問税理士に頼るしかなくなってしまいます。

 上記ような事情から、税理士業界には記帳代行をメイン業務とする税理士が多いのです。


(3)会社から見た記帳代行のメリットとデメリット

 記帳代行型のメリットは、税理士に請求書や領収書を送るだけで、1ヶ月ほどすると試算表が送られてくる分かりやすさです。自社では面倒な会計記帳を代行してくれるという点で、経理業務にリソースを避けない創業初期の中小企業などには魅力的に映るかと思います。

 一方で、メリットの裏返しともいえるデメリットがあります。まず前述の通り記帳代行の実務を担当するのはパートの方であり、税理士は直接見ません。そうなると顧問税理士として経営相談や税務対策などのアドバイスをするにしても、一から貴社の会計状況をみることになる為、有益なアドバイスをしてもらえる確率は高くないです。また前述の通り、会社ではなく税理士事務所側に必要な資料が揃う事になる為、自社だけでは経理や財務の数値把握が困難となってしまいます。また任せっぱなしですと、急に試算表が欲しいと思っても、税理士事務所から届くまでは手に入らず、タイムリーに打ち手を打つことができなかったり、打ち手の効果をすぐに経営業績として確認できないという弊害も起こりえます。つまり、記帳代行は税理士にとっては会社がいつまでも自分に頼ってくれる有難い仕組みですが、会社からすると財務経営力が成長しない問題が生じることになります。


(4)記帳代行の税理士がマッチする場合とは

 記帳代行型税理士が適合する会社もあります。たとえば、社員数が1~2名で経理が全くできない会社や、創業当初でとにかく安く記帳したい会社などです。前述のような小規模零細や創業者の場合には記帳代行も止む無しと考えられますが、会社が成長してきた場合には、記帳代行から脱することを考えておかなければならないと思います。その場合、いまの税理士は記帳代行料が顧問料ですので、記帳代行をやめて会社が自社記帳をした場合に、どのような顧問業務をお願いできるのかについて税理士に説明を求めることも必要だと考えられます。


2. お客様は神様型~万能なようで得意分野なし?~

(1)お客様は神様型税理士の見極め方

 お客様は神様型の見極め方は簡単で、税理士が「どの会計ソフトでも当事務所は対応できます」などと説明していれば、このタイプになります。場合により、会計ソフトを2~4つに絞っているタイプもありますが、1つに絞っていなければ、基本的にはこのタイプと考えて頂いて構いません。確認方法としては「先生の事務所ではどの会計システムに対応していますか?」と聞くだけです。複数ソフトに対応していると税理士が説明すれば、このタイプと判断できます。


(2)会社から見た「お客様は神様型」のメリットとデメリット

 会社から見た時のメリットは言うまでもなく、自社が使いたいと考えている会計ソフトに対応してもらえる点です。何らかの事情で会計ソフトを変えたくない場合や、今後会計ソフトを変更することを想定している場合などには、こういうタイプの事務所はありがたい存在です。

 一方で、会社にとってデメリットもあります。それは税理士事務所のスタッフから会計ソフトの活用についてほとんどアドバイスが受けられず、会社の経理力が育たないという点にあります。なぜなら、このタイプの税理士事務所のスタッフは全ての会計ソフトに精通している訳ではないからです。当然ですが、幾つもの会計ソフトに随時対応していくのは非常に煩雑であり、各会計ソフトのバージョンアップによる新機能の追加をすべてキャッチアップしておくことは不可能といっても過言ではないです。つまり「お客様は神様型」の実態としては、スタッフは、会社が会計ソフトの操作について質問をしても複雑な仕様については回答ができませんし、会計ソフトの活用指導なども行っていないケースがほとんどなのです。

 現在は、会計ソフトが発達し、FinTech(フィンテック)と呼ばれる銀行口座の連携機能や、Excelからの仕訳読込機能など、生産性アップや経理力向上のための機能がありますが、上記のような事務所ですと、これらを使いこなすための指導を受けることが難しくなり、結局は試算表を作成するだけの入力マシンと化していることが多いのです。機能を使いこなし会社の経理力を向上するためには、税理士事務所としては、会計ソフトを1つ(ないし2つ程度)に絞り込んでノウハウを蓄積し、お客様に対して存分にアウトプットしていく体制が必要となります。顧問先に対して会計ソフトの選定から指導できるようにする為には、万能型では難しいのです。


(3)お客様は神様型がマッチする場合とは

 自社開発会計ソフトを使っている、会計ソフトを何度も変更することが想定される、などの限られた場合には「お客様は神様型」が良いと思います。しかし、そういった事情がある会社だとしても、どの会計ソフトを使うかにこだわるよりも、しっかりとシステム指導、経理指導をしてくれる税理士かどうかにこだわった方が、会社の成長発展に寄与することになるでしょう。そのためにも、税理士が会計ソフトに対してどのような方針を持っているのか見極めて判断することが大切だと言えます。


3. 経営アドバイス型税理士

 (1)経営アドバイス型税理士は全体の3割未満

 丸投げ記帳代行型の対局ともいえる経営アドバイス型税理士は全体の3割未満、下手をすると1割程度しか存在していないかもしれません。理由としては、税理士としての一定の経験が必要な上に、勉強し続けるマインドを持っていないとこのタイプの税理士では居られない為です。


 (2)経営アドバイス型税理士の見極め方

 前述の通りこのタイプの税理士のシェアは、税理士の1~3程度と思われますので、探すのは少し大変です。知り合いに税理士紹介をしてもらう場合には3人以上、できれば5人以上の税理士を紹介してもらい面談するのが望ましいでしょう。見極め方としては、「先生は記帳代行をしていますか?」と質問して「小規模零細企業を除き、原則として記帳代行はしていません」と答える税理士であれば、このタイプである可能性が高いです。また「関与先はどの会計ソフトを使用していますか?」と質問して「会計ソフトを1つに絞っています」と答える税理士であれば、このタイプの可能性が更に高まります。なお、「先生はいろいろアドバイスしてくれますか?」と抽象的な質問をしても体の良い返事をされるだけで判断は付かないと思われますので注意が必要です。


(3)経営アドバイス型税理士のメリットとデメリット

 経営アドバイス型税理士の場合、会社が長期的に成長できる伴走者を得られる点が一番のメリットです。末永く経営をしていくためには、様々な角度から経営を考え、打ち手を打っていくことが必要ですが、アドバイス型税理士であれば、情報提供とともに良き相談相手になり、また経理や財務の知識を教えてくれますので、経営者としての人的成長も含めて、付き合うメリットがあります。また、経理担当者がいる場合、経理担当者がその税理士と話をすることで、経理人材の教育指導にもなります。また公認会計士でもある税理士であれば、会社法や原価計算やM&Aなどより広範囲の戦略的な相談も可能です。


  デメリットがあるとすれば、アドバイスを必要としていないor受けたくない経営者や、あまりに零細小規模でアドバイスを受けるほどでもない場合は合わないです。また記帳代行などルーティンワークを依頼したい場合も、マッチしない可能性が高いです。なぜならアドバイス型税理士でも記帳代行をしてくれる場合もありますが、宝の持ち腐れと言えます。税理士の活用方法を見直す方が長い目でみてメリットを得られる場合があるでしょう。


(4)リアルタイムに業績を把握し、未来会計へ

 経営アドバイス型税理士の場合には、会社がリアルタイムに業績を把握できるよう自社経理(自計化)を指導してくれます。月次決算をタイムリーにすることで経営者が業績をすぐに把握し、頭を回すことができ、現場への指示も鋭くなります。足元までの業績が分かれば、期末の業績見通しもできるようになります。業績見通しができれば決算対策や納税対策も的確に打てるようになり経営をマネジメントできるようになるのです。


(5)自社経理(自計化)の秘訣

 自社経理(自計化)が難しいと思われる会社もあることでしょう。やったことがないことに挑戦することは不安が付きものです。ただ、経営アドバイス型税理士であれば、経理指導や自計化にも慣れている事がほとんどです。何より会社が自社で会計記帳するメリットを知っていますから、きっちり指導してくれるはずです。また、現在は、ITツールが発達しているため、記帳といっても手入力が減っています。例えば、FinTechにより、銀行口座の入出金データを会計システムに読み込み、AI学習により自動仕訳させることができます。社内にあるExcelデータを会計システムに読み込むことも可能です。給与システムから給与仕訳、販売システムから売上仕訳を連携するなども可能ですから、これら仕訳連携が進めば、相当の省力化ができます。これらについて経営アドバイス型税理士から指導を受け、身に着けることで、アウトプットや分析など付加価値の高い部分に時間をかけることができ、税理士とより多く戦略的な話をする時間を設けることができるようになります。


(6)どんな会計システムを導入すべきか

 経営アドバイス型税理士の場合、会計システムを1つに絞り込んでいることが多いと思います。これは税理士のスタッフにとって複数のシステムに熟練することは難しいためです。1つのシステムに絞り込むことでスタッフがシステムに熟練し、会社にしっかり指導ができるのです。最近の会計システムは、FinTech機能やデータ連携などオプションツールが発達しており、これらを縦横無尽に指導するためには、税理士スタッフがシステムに熟練する必要があります。税理士が会計システムを絞り込んでいることは会社にとってデメリットではなく、メリットと言えるでしょう。税理士の指導もなく会計システムを使った場合には、会社は試算表を打ち出す程度で終わることが大半です。それであれば会計システムにこだわる必要はありません。税理士がお勧めする会計システムを導入することが会社にとっての一番メリットになると思われます。


(7)経営アドバイス型がマッチする場合とは

 会社を発展させるため財務力や信用力を高めたい、また経営者として経営知識や法令遵守をして、末永く経営したいと思っている方にとってはマッチすると思います。またシステムを活用して経営体制を向上させたい、生産性を高めたいという会社にもマッチすると思われます。税理士の指導内容は難しいことが多く、最初は何を言っているのか分からないことも多いと思います。しかし1年、2年とそれを実行し、身をもって経験することで、やっと指導の意味が分かる時があります。末永く長い気持ちで税理と付き合おうと思っている方は、向いているでしょう。


税理士との相性は重要

 ここまで見てきた通り税理士には色々なタイプがあり、会社にマッチする税理士を探すためには、何人もの税理士に会ってじっくり比較検討することが重要です。見極め方とメリット・デメリットを参考に、自社に合う税理士に会社をしっかり見てもらうようにしましょう。


無料相談承ります

 税理士法人山岸会計では上述のような税理士選びについても相談に乗っております。初回相談は無料でお受けしておりますので、もし「相性の良い税理士を探したい」というお気持ちがおありでしたらお気軽に一度ご連絡頂けますと幸いです。

 ※相談したからといって弊事務所に顧問税理士を依頼する必要はございません。


改正電子帳簿保存法における経理の電子化対策の仕方

 ※下記は2021年11月5日に執筆したもので、当時の法令通達等を参考に解説しております。その後、令和4年税制改正および令和5年税制改正により、電子取引データの電子保存に関する保存要件や検索要件について緩和策が公表されております。これにより令和6年1月1日以降については、税制改正内容をご確認のうえご対応ください。

 

 この度、電子帳簿保存法(以下、電帳法)が改正され、すべての事業者は電子帳簿・電子書類・電子取引データを電子保存することが可能となりました。この内、特に注意を要するのが電子取引データでありますが、その電子保存が強制されています。これに伴い、様々な対処が必要となってくる為、今回の改正法に対して企業としてどのように対処していくべきかについて解説を行います。


1. 電帳法の概要について

Q1 改正電帳法とは、どのような法律なのでしょうか?簡単に教えてください。


A1 改正電帳法とは、これからのデジタル社会における帳簿や書類の保存方法を、明確にルール化したものになります。したがって、今後は、この法律に則った会計帳簿や経理書類の保存をする必要があります。会社の経理体制をデジタル社会に合わせて変えていく、というイメージで、今回の対応を考えていくことが求められています。


Q2 この法改正により、中小企業としてはまず何に対応しなければいけないのでしょうか?優先順位を教えてください。


A2 改正電帳法は、大まかに3つの区分に分かれています。

(1)電子帳簿保存

(2)スキャナ保存

(3)電子取引保存


このうち、多くの中小企業ではまず(3)電子取引保存を優先して対応しなければなりません。(1)電子帳簿と(2)スキャナ保存による電子化は、事業者の任意のままなのですが、(3)電子取引については、令和4年1月1日から法人・個人すべての事業者において電子取引データの電子保存が義務化されてしまいました。つきましては、まず法令遵守上、この(3)電子取引保存への対応に優先して取り組むべきだといえます。



Q3 電子取引では電子保存が義務化されるとのことですが、紙でやり取りしている請求書や領収書はどうしたら良いのでしょうか?


A3 紙の書類でやり取りされた請求書や領収書は、電子取引ではないため、従来通り、そのまま紙で保存すれば大丈夫です。無理に電子保存する必要はありません。


 


Q4 従来、電子取引については紙の書面に出力して保存していました。PDFで受け取った請求書や領収書を「そのまま印刷」して保存しておけば、問題ないのでしょうか?


A4 電子取引については紙の書面に出力して保存するといった対応が、令和4年1月以降は許されなくなります。しかも、改正電帳法に則って電子保存していないと、税務調査で「書類が保存されていない」とみなされて、損金が否認されたり、最悪の場合、青色申告承認が取り消されて、税務上の恩恵が受けられなくなったりする可能性があり、要注意です。


 

Q5 具体的に、電子取引を紙で保存しておいた場合の不都合について教えてください。


A5.令和4年1月1日から、電子取引はオリジナルデータを保管することが法律上義務化されるため、もしこれに対応していないことが税務調査等で明らかになった場合、青色申告の承認が取り消さるなど、税務上不利な取り扱いを受ける可能性があります。


 実際には、保管していなかった電子請求書等の再発行や再取得を求められたり、預金支払データなどの参考資料の追加提出等により、救済が図られるケースもあり得るとは考えられますが、例えば一部については費用が否認される場合も考えられます。また、青色申告の承認取消は、真に青色申告書を提出するにふさわしくないと認められるか等を検討したうえで判断される、となっていますので、税務調査時においても上記のような追加的な説明や資料提出、取引先の情報等を総合的に勘案して確認することになります。


 

Q6 もし青色申告承認が取り消された場合、どのような不都合があるのでしょうか?


A6 青色申告の承認が取り消された場合、税金計算における各種特典が受けられなくなります。例えば、繰越欠損金の繰越控除や繰戻還付、各種の特別償却や税額控除、引当金の損金算入等ができなくなり、個人の場合には青色事業専従者の給与の必要経費の算入や、青色申告特別控除も受けられなくなります。 これらを適用して申告している場合には、留意が必要です。



2. 電子取引について


Q7 電子取引について、何から手を付けて良いのか分からないのですが・・・


A7 大まかに以下のような流れで、概要を把握してもらればと思います。


社内にどれだけの電子取引データがあるか探索する

 これは電子取引データの発行側と受取側に分けて、探索すると良いでしょう。


電子取引データを、どのように保存するか検討する

 その際、後述する保存要件がありますので、それに沿った保存を検討しましょう。


電子取引データを、どの媒体に保存するか検討する

 その際、後述する保存期間の要件がありますので、それに沿った保存ができるか検討しましょう。

 バックアップ体制などを検討しましょう。


 

Q8 電子取引とはどのようなものでしょうか?


A8 電子取引とは、取引情報の授受を電磁的方式により行う取引をいいます(法2五)。

具体的には以下のような電子取引の例があります。

 (1)電子メール

 ①電子メールにより授受した請求書や領収書等のデータ

 ②インターネットのホームページからダウンロードした請求書や領収書等のデータ

 ③ファイル転送サービスにより授受した請求書や領収書等のデータ


 (2)インターネット等による取引

 ①ECサイトでの物品購入での経費仕入決済データの授受

 ②鉄道/航空/宿泊代などの経費仕入決済データの授受

 ③ECサイトを利用した商品・サービスの販売にかかる売上決済データの授受

 ④電子レシートアプリなどスマートフォンアプリによる決済データの授受

 ⑤請求書配信WEBシステムでの請求書の授受

 ⑥電子請求書や電子領収書の授受に係るクラウドサービス

 ⑦経費精算システムによる精算書データの授受

 ⑧電子契約による契約書の授受


 (3)その他

 ①インターネットFAXや複合機ペーパーレスFAXによる授受

 ②タブレットによる電子申込システム利用による発注データの授受


 (4)EDI取引

 ①EDIシステム、WEB-EDIシステム、サプライチェーンマネジメントシステム

 ②インターネットバンキング、全銀EDIシステム、API連携システム、FinTechサービス



Q9 メールでの電子取引について、どのようなことに注意すべきでしょうか?


A9 電子メールの本文に取引情報が記載されている場合は当該電子メールを、電子メールの添付ファイルにより領収書PDF等が授受された場合は当該添付ファイルを保存することになります。すべての電子メールを保存する必要はなく、あくまでも取引情報に該当する場合のみ保存が必要となります。なお、後述する検索性要件があるため、メールシステムそのものでは保存要件等を満たさないケースが現状多いため、注意が必要です。


 

Q10 従業員が、Amazon等で購入した立替精算があるのですが、これも電子取引になるでしょうか?


A10 従業員がAmazonなどで会社の経費を立替た場合も、電子取引に該当します。従業員から取引データを集約し、会社として取りまとめて保存し、管理することが必要です。一定の間、従業員のパソコンやスマートフォン等に保存しておくことも可能ですが、従業員が退職してしまったりするとデータ保存ができなくなってしまう恐れもありますので、タイムリーに保存する体制を考える必要があるでしょう。


 

Q11 最近では、電気代、ガス代、水道代、電話代、などもWEB上での請求明細になってきていますが、これらも電子取引になるでしょうか?


A11 これらも電子取引になります。なお、後述する保存期間の要件があり、これらのサイトが、例えば2年程度しかデータ保持をしない場合には、タイムリーに保存しておかないとデータ保存がそもそもできないケースも発生しますので、注意が必要です。

 



Q12 最近では、メールのURLをクリックして、ホームページから請求書PDFをダウンロードする形式もありますが、これも電子取引になるでしょうか?


A12 こちらも電子取引になります。これらのURLは有効期限が3ヶ月程度の場合も多く、タイムリーに保存しておかないとデータ保存そのものができないケースも発生しますので、注意が必要です。


 

Q13 インターネットバンキングで振込をしているのですが、これも保存しないと行けませんか?


A13 インターネットバンキング取引は、EDI取引で、電子取引となりますので、振込(控え)も保存する必要があります。ただ、実際のところ、税務当局はその気になれば銀行取引データは取得できますので、どちらかと言うと税務当局側が興味があるのは、請求書や領収書等の取引情報であろうと思われます。国税庁の電子取引に関する解説資料でもインターネットバンキングについては一言も出てきていません。


 

Q14 電子取引の把握の仕方についてアドバイスを頂けますか。


A14 どのような書類をやり取りしているのか、誰が誰に発行しているのか、受領しているのかを、商流に沿って整理すると漏れなく把握できるのではないかと思われます。その際、自社が発行している電子情報については比較的簡単に把握できると思われますが、他社から受け取る電子情報については、本社・支店・支部・営業所・社員のどこでどこから発生するのかは様々ですので、探索と理解に時間がかかる場合があると思われます。



Q15 電子取引の把握での注意点を教えてください


A15 本部のみならず、支店・支部・営業所・社長・社員など、組織のすべてのセクションにおいて電子取引がどうやり取りされているのか、全体的なチェックが必要かと思います。中堅企業などでは、本部でまず電子取引の情報収集作業をしてみて、そのノウハウを踏まえて、各支店・支部・営業所・社員などへ展開するのが良いのではないかと思います。


 山岸会計の関与先のケースですと、 発注書・見積書・納品書などは仕入部門が取得しているものの、請求書・領収書などは経理部門が取得となっており、部門が異なるため情報が分断されていて、社内でもお互いがお互いの電子取引についてかなり情報不足であることが判明しています。



3. 保存要件について


Q16 改正電帳法では、会社として改ざん防止措置が必要とのことですが、具体的に何をすればよいのでしょうか。


A16 改ざん防止措置は全部で4つありますが、そのうち1つを選べば良いです。

(1)発信者側が電子データにタイムスタンプを付す

(2)受信者側が電子データにタイムスタンプを付す

(3)訂正削除ができない又は履歴が残るシステムを利用する

(4)改ざん防止のための事務処理規程で対応する


一番簡単なのは、(4)事務処理規程での対応となります。国税庁の一問一答の問24に規定例がありますので、これをダウンロードして会社版にカスタマイズすればOKです。会社毎に保存ルールや電子取引の範囲は違うと思いますので、会社に合わせて作る必要があろうかと思いますので、早めに検討するのが良いと思います。

 


Q17 改ざん防止措置は、会社としてどれか1つだけ選んで実施するイメージでしょうか?


A17 電子取引データごとに改ざん防止措置を選択します。例えば、取引先から受領する請求書や領収書PDFは、書類保存システムを購入してタイムスタンプ方式で保存する一方、自社発行の請求書控えPDFは、自社サーバーに保存しておき事務処理規程方式で保存する、というように、保存方法をハイブリッドにするケースはあろうかと思われます。



Q18 電子取引データを検索できるように保存する必要があるとのことですが、どう保存したら良いのでしょうか?


A18 単純に保存しておけば良いというわけではなくて、「いつでも検索可能な状態にしておかなければならない」とされています。検索可能とは、主に取引年月日、取引金額、取引先名で検索できることが必要です。


 

Q19 メールは、過去からすべて検索できるから、そのままメールソフトで大丈夫でしょうか?また、Amazonなども過去の購入履歴があるから、大丈夫でしょうか?


A19 基本的にメールソフトやショッピングサイトの購入履歴は電帳法の検索要件を満たさないものが多いです。取引金額や取引年月日による検索ができないサイトは、電帳法の検索性要件を満たしません。取引年月までしか抽出できないケースやメールソフトだと取引先名や取引金額での検索が容易でないケースがあろうかと思いますので、残念ながら難しいといえます。今後は、システム会社側が電子取引の検索要件を満たすようにバージョンアップしていったり、法改正で要件緩和されたりすれば変わる可能性はありますが、今時点では、難しいケースが多いので、別途、取引情報が記載・添付されたメールを1つ1つ保存する必要があろうかと思います。


 

Q20 電子取引データは何年間保存しておく必要があるのでしょうか?


A20 書類保存と同様になりますが、法人の場合には7年間(繰越欠損金控除を受ける法人は10年間)、個人事業主の場合には5年間保存が必要です。


 

Q21 電子取引データを長期間保存するうえでの注意点はありますか?


A21 自社サーバーやクラウド保存サービスで保存し、バックアップを遠隔地保管しておくことなどが必要と思います。例えば個人のパソコンやUSBに保存していると、無くしなり廃棄してしまう恐れがあります。数年分の電子取引データが一瞬ですべてなくなる可能性もありますので、注意が必要です。なお、一般的にハードディスクやSSDの耐用年数は2~5年程度と言われていますので、故障したり読み込みができなくなったりするケースも考えらえます。法人の場合10年間の保存を前提に、データ移行も踏まえて計画的に保存する必要が出てくると思います。


 

Q22 保存する形式については決まっていますか?


A22 保存するデータの形式は特定されていないので、PDFでなくても結構ですが、汎用性を考えると一般的にはPDFでしょう。ただ、JPEG形式とかXML形式とかでも構いませんが、明瞭に確認でき、速やかに出力が可能であれば良いです。もしEDI取引などでデータが暗号化されている場合には暗号を解いて、見読できる状態で保存することが必要でしょう。


 

Q23 書類保存システムを使って保存する場合のメリットを教えてください。


A23 TKC会計システムでは書類保存システムが1機能として搭載されています。この書類保存システムを使うことで、改ざん防止措置(タイムスタンプ)、検索性要件、保存期間など電帳法が求めるすべての保存要件を満たして保存することが出来ます。また、会計システムに証憑を紐付けし、証憑表示ボタンを押下することで証憑をすぐに閲覧・ダウンロード・印刷できるようになり大変便利です。


 

Q24 TKC会計システムの書類保存システムを使うことで、会計事務所とのやり取りも便利になりますか?


A24 TKC会計システムの書類保存システムを使うことで、会計事務所が月次巡回監査で訪問する前に、会計伝票と証憑書類を事前確認することができ、訪問時にターゲットを絞ることができるためお互いに効率的になります。また、随時、同じデータを見ながら相談できるため、相談のしやすさがアップすることが考えられます。


 

Q25 今回の電子取引の対応が大変なんですが・・・


A25 今回の電帳法改正は、中小企業の経理実務の現場を配慮しているとは言い難い面があることは確かです。また国税庁の一問一答は実務を網羅しておらずグレーゾーンが多いですし、国税庁パンフレットなども分かりにくいので中小企業は戸惑うことと思います。令和4年1月以降も、実務が混乱しそうなことは想像に難くありませんが、冒頭にあるとおり、改正電帳法は今後のデジタル社会における帳簿と書類の保存ルールを定めたものですので、将来的には、この電帳法に沿ったデジタル保存が中小企業の一般的経理方法になっていくと思います。それを念頭に少しずつ経理実務を改善していく、ということになろうかと思われます。



(消費税について)

以下は中級以上の論点となりますので、一定の知識経験がある方向けとなります。


Q26 電帳法は法人と個人が対象とのことですが、消費税はどうなっていますか?


A26 消費税は改正がなかったため、従来通り、電子取引についても原則として書類での保存となっています。ただし、電子保存したい場合には、会計帳簿に「書面で請求書等を受けられなかったやむを得ない理由」と「相手方の住所等」を記載して保存することとなっています(質疑応答事例「インターネットを通じて取引を行った場合の仕入税額控除の要件について」)。ただこれも面倒ですよね。実際には、電子メールに請求書のPDFが添付されてきたとしてこれを出力した書面と、郵送されてきた紙の請求書の区別をすることが難しいので、税務調査時にその判別は容易ではなく指摘は難しいとされています。このため請求書等がデータを出力した書面だったということを理由として消費税が否認された事例も聞いたことがない、と言われています。またインボイス制度においては、法令上、書面出力保存が認められることになっており、令和5年10月のインボイス制度開始までの間は、過渡期に過ぎず、どうせ認められる予定なので、いまからやっても大丈夫だろう、という総合的判断から、否認されることは一般的には考えにくいだろう、と言われています。このあたりはややはっきりしないまま実務が進みそうな向きがあります。


 

無料相談承ります


 税理士法人山岸会計では上述のような改正電子帳簿保存法への対応に関する相談にも乗っております。初回相談は無料でお受けしておりますので、もし、改正電子帳簿保存法への対応に頭を悩ませている経営者の方や経理責任者の方、改正電子帳簿保存法への対応を考えなければいけないけれども何も出来ていないという経営者の方や経理責任者の方がいらっしゃいましたお気軽に一度ご連絡頂けますと幸いです。

 ※相談したからといって弊事務所に顧問税理士を依頼する必要はございません。