「今すぐお金が必要な訳ではないので創業融資は自分には不要」という経営者の方は沢山いらっしゃいますが、それは大きな誤解です。ビジネスチャンスを逃さないために、創業時に融資は受けておくべきです。この理由を3つに絞って解説します。
1. 創業融資を受けた企業の方が廃業率が低い
創業企業が生き残る確率、いわゆる生存率について分析したデータがありますが、一般的な創業企業の生存率に比べて、創業融資を受けた場合の生存率が格段に高いというデータがあります(中小企業白書2006年度版、日本政策金融公庫2016年新規開業パネル調査)。
これは企業の生命線が一にも二にも「資金」であることを如実に表しています。資金が不足して給料や家賃が支払えなければ、どんなに良い事業をしていても、従業員やオフィスを維持できず企業はつぶれてしまうという現実を物語っているのです。特に創業初期には、売上見込みがなくなったり、取引先の入金が遅くなったりと、不安定なことが起こりやすい時期です。そのようなリスクが高い時期に、生命線である「資金繰り」に対する手当てが十分でなければ、廃業するリスクも高まることは当然と言えるということを想定しておかねばなりません。
上記について、創業後しばらく実績を見てから必要になった段階で、銀行に融資を申し込めば良いのではないか?と考える経営者の方も少なくないでしょう。しかし、実績が出てから融資を申し込んだもののあえなく断られてしまったという話はよく耳にします。銀行は調子の良い時はお金を貸してくれますが、調子が悪くなってから相談しても色良い返事はもらいにくいものです。実績に乏しい創業初期の企業が、赤字で資金繰りに課題が出てから借入申込をしても、希望通りに審査が通るとは限らないということは良くある話なのです。
では、創業者がとり得るリスクヘッジ手段は何でしょうか?それは創業時点で、しっかりと資金調達(創業融資)を受けておくことです。借入すること自体をリスクと考えて創業融資を受けない場合には、逆に創業後の資金繰りリスクに対してあまりに無防備であるともいえるでしょう。創業融資を受けた企業が生存率が高い(=資金が続いている)というデータからすると、創業融資を受けることの方が、経営リスク対策になっていると言えるのです。
また、創業融資を受けるメリットがもう一つあります。創業融資を受けて資金水準が高くしておくことで、ビジネスチャンスが到来した場合に即座に投資実行ができ、いち早くチャンスをつかむことが可能になります。融資を受け余裕資金が生まれ→それを投資し→売上と利益を拡大し→さらに融資が受けやすくなる、という事業安定化の好循環を生み出していくことができるのです。
会社がつぶれるのは借入が多いからではなく、預金が少ないからです。それを念頭に、預金水準の低下を見越した対策をしっかり打っておく、ということが必要になります。会社にお金が入ってくる入り口は2つしかなく、1つは「売上による営業入金」で、もう1つは「借入による財務入金」となります。創業時には営業入金の見込みが不安定ですから、この段階では借入財務入金の目途をしっかりと付けておくということが、経営者の役目と言えます。
2. 創業時は創業融資が受けやすい
会社を設立したばかりで実績がない場合、融資が通らないのではないか、と考えるかもしれませんが、それは大きな誤解です。実際には、創業直後は融資の審査通過率が高い傾向があります。通常、創業1年目は創業赤字となりやすく、資金水準が低下してしまうため、その段階で融資を申し込んでも、審査が通りにくいという話はよく聞きます。逆に、創業直後で実績が存在しない段階では、実績を求められませんので、事業計画書のみで勝負することができ、このため審査通過率が高くなります。
一般的な創業融資の審査通過率は50%とも70%とも言われますが、審査に一度落ちてしまうと、その金融機関に対しては少なくとも半年~1年の間は融資申し込みができなくなるのが通常ですので、その点から、最初の融資申し込み時にしっかりと審査が通過できるよう、きちんとした事業計画を策定する必要があります。この点、創業融資に強い会計事務所であれば、銀行担当者が読みやすく、筋の通った事業計画になるようにアドバイスしてくれますので、創業融資に強い会計事務所等と一緒に創業計画を策定し、融資通過率を高めるなどの対策をする事が望ましいと思われます。
なお、創業融資の申し込み時に連帯保証人が問題になる場合があります。民間金融機関の場合、会社代表者について連帯保証人を要求するケースが多いかと思いますが、もしも会社が借入返済できなくなった場合には、個人財産が差し押さえられてしまうかもしれず、個人にとっては大変なリスクかと思います。しかし、最近では日本政策公庫の創業融資では、多くの融資商品で無担保・無保証人となっていますので安心と思います。融資商品を選ぶ場合には、金利の高低で選ぶよりも、無保証人であるかどうかを重視することで創業者個人のリスク対策になると思われます。
3. 事業計画を作ることで創業プランが固められる
前述の通り、創業融資の審査通過率を高めるためには事業計画書を作り込むことが重要です。日本政策公庫の場合には、創業計画書や企業概要書のフォーマットが用意されていますが、これは知識がない創業者がなんとか記入できるようにしている資料にすぎず、実際の所、これだけでは情報不足が否めません。例えば創業計画書では、創業の経緯欄が4行しかありませんし、セールスポイント欄は3行、販売戦略欄も3行しかなく、ほとんど詳細を記入することができないのです。これでは自社のアピールができず、担当者に理解してもらえない可能性があります。したがって、銀行への提出書類としては、審査担当者にしっかりと自社のビジネスモデル等を理解してもらえるよう、ビジネスプランとしての詳細な事業計画書を別紙で提出することをお勧めしています。特に、文章(Word)において、創業の経緯、セールスポイント、ターゲット、販売戦略、外部環境、経営課題など、自社がどういう戦略のもとになぜ創業し、どうやって顧客を増やし、売上を上げて行くのかについての道筋・戦略をしっかりとアピールすることが重要です。単なる夢物語ではなく、地に足を付けた計画であることを説明する文章が必要となります。また書きっぷりという点でいえば、融資担当者が理解しやすい言葉や専門用語を使うと良いでしょう。可能であれば、創業融資に強い会計事務所にもアドバイスしてもらい、語彙や言い回しなどを校正してもらうと良いかもしれません。
また、日本政策公庫のフォーマットでは、数値計画は創業計画の中の「事業の見通し」として簡易なPL(損益計算書)がある程度ですが、これもスペースが少ないため、数値計画の説明としては非常に物足りない部分があります。しっかりとアピールしたいのであれば、創業からの月次計画を策定し、売上については数量と単価、人件費については月給と人数、減価償却費については設備投資計画などから作成することで、足腰の強い計画を用意すべきです。そうすることで融資担当者から何を質問されてもきちんと回答できる数値計画となるはずです。なお会計事務所と一緒に数値計画を作る場合には、損益計算書計画とともに、貸借対照表計画とキャッシュ・フロー計画も同時に策定してもらえます。いわゆる財務3表連動計画(①損益計算書、②貸借対照表、③キャッシュフロー計算書の3財務表が連動する計画)を作ることにより、予定した売上計画で進んだ場合に、資金水準がどれくらいで推移するのかが把握でき、足りない金額をベースに、融資申込額や自己資金投入額を見直すこともできるのです。資金繰りのボトム(底辺)がいつ頃到来するのかが分かり、そのための資金手当てを見通すことができ、生存率を高める財務戦略が出来上がっていくでしょう。
なお、2年程度の月次創業計画を策定することで、消費税の課税選択の判断材料にもなります。免税事業者期間を最大にするのか、あるいは課税事業者を選択して消費税還付を獲得した方がメリットがあるのかなど、事業計画作りが、戦略的な税務対策にもなり、節税により資金繰り対策にもなるのです。このようにして、創業融資を受けるための事業計画作りをすることで、副次的に、財務・税務の戦略も立てることができ、創業スタート段階で経営者としての力を付けることもできるでしょう。
一度きりのチャンスを活用しましょう
創業融資は、計画だけで融資審査を受けることができる人生で一度のチャンスと言えます。借入によりビジネスチャンスを掴み、返済実績を積み上げておくことで2回目の融資の可能性も広がるなど戦略的な財務運営に繋がるメリットが見込めます。末永く生存する企業にするためにも、創業融資(財務調達)によりキャッシュ・フローを意識した経営体制を目指して行くことをお薦めします。
無料相談承ります
税理士法人山岸会計では上述の創業融資の相談に乗っております。初回相談は無料でお受けしておりますので、もし少しでも興味がおありでしたらお気軽に一度ご連絡頂けますと幸いです。
※相談したからといって弊事務所に顧問税理士を依頼する必要はございません。
いまの顧問税理士のままで大丈夫かな?と思ったことがあるものの、なんとなく顧問契約を続けている…ということは無いでしょうか?長年の付き合いがある、という理由だけで、不満を溜めながらも顧問契約を払い続けていることが経営にとって良い事なのか疑問の向きもあります。そこで、今の税理士のままで大丈夫か心配な方向けに、チェックすべきポイントをまとめて解説します。
1. コミュニケーション(態度)に問題がないか
最初にチェックして頂きたいのが、税理士(会計事務所)とコミュニケーションが上手く取れているかという点です。顧問税理士と日頃から気軽に相談ができているかどうかを今一度チェックしてみると良いでしょう。
それでは、税理士とのコミュニケーションのレベル別に問題と対策を見て行きましょう。
(1) 相性が合っているか
この点を気にされる経営者の方は多数いらっしゃいます。人間同士ですので相性の良し悪しがあるのは仕方がないと思います。また相性がいまいちであっても、業務上の相談には適切に乗ってもらっていて会社が助かっているということであれば、ビジネス上の関係と割り切って付き合い続けるのも一つの方策です。なぜなら人間的に相性が良く、自社のビジネスに貢献してくれる税理士を見つけられるとは限らない為です。
なお、税理士との相性がどうしても良くない場合の対策としては、担当のスタッフの人を中心にサービスを受けるのが良いかと思います。
(2) 税理士やスタッフと会う頻度は適切か
税理士や事務所スタッフとの定期的なコミュニケーションがほとんどがなく、1年に数回しか会わないとか、訪問しても20~30分で帰ってしまうという場合には問題がある可能性が高いです。通常、このようなサービス状態であると、会計税務上でも問題が発生することがあり、それを契機に顧問契約の見直しを検討した方が良いケースは少なくありません。
接触が少ない理由は様々あるかと思いますが、税理士側から見てみると、会ってもいないのに文句も言わず顧問料を支払い続けてくれてのであれば、こんなに楽なことはありません。そうであれば「触らぬ神に祟りなし」として、放置しておくのが得策という考えになっている可能性が高いと言えます。中途半端に会社に接触すると、かえって解約リスクも出てくるので、できるだけ接触しないという行動様式になってしまっているケースがあります。
コミュニケーション頻度が少ない税理士への対策としては、まず税理士に対してコミュニケーションを取るように依頼し、できれば毎月訪問するなどの顧問サービスの具体的内容を取り決めるのが良いでしょう。訪問時に証憑書類をチェックする、決算予測をする、会計システムの新機能を説明する、税制改正の情報提供をする、等の内容を会社主導で決めて約束事(契約)とするのが良いと思われます。もし税理士が約束したサービス提供をしないなどの場合には解約すると伝えたうえで、改善の機会を持つのが一つかと思われます。
会計事務所が何をすることにより顧問料を支払うのかを明確に定義づけすることは会社として有効なことだと思います。もし税務問題が起きてしまってから税理士のせいにしても会社としては問題解決になりませんので、積極的に対応をしてくれるよう主張すべきと思われます。もし、税理士との関係上、そのような改善要望を突き付けられない場合には、税理士変更の検討も会社として必要なことだと思われます。
(3) 税理士にサービス精神はあるか
税理士の態度が横柄であったり、税理士に相談すると叱られるなど、コミュニケーションの内容に問題があるケースも珍しくはありません。税理士が怖くて相談ができなくなり、言われるがままになっている…という事例も実際に存在します。会社自身でもすでに問題を認識しているレベルと思いますが、関係改善をしっかり検討しないと行けない状態です。
対策としては、上述の(2)のケースと同様、顧問契約の内容を具体的にし、どのようなサービスを税理士がすべきかと明確にすることが重要です。契約上、双方は対等であることを明確にし、場合により、服務規律・サービス態度・円滑な業務遂行について明記することも対策になるかもしれません。
また、顧問サービスは相談がしやすいかは重要事項となりますので、コミュニケーション問題が改善しない場合には、会社として税理士変更の検討も必要なことだと思われます。昔とは違い、最近は税理士にもサービス精神が必要な時代であり、若手税理士を中心に、非常にサービス精神が高い税理士は少なくありません。それらの税理士への変更に目を向けることも対策の一つと考えられます。
2. 税理士が高齢で、業務に支障が起きていないか
税理士業界は過半数が60歳以上であり、80歳以上も10%以上いるという高齢化の著しい業界です(税理士実態調査)。そのため会社の顧問税理士の高齢化が問題になっているケースは相当に増えてきています。高齢化が一概に悪いということではありませんが、中には税制改正や会計システムに疎かったり、ケアレスミスや失念などが顕著となる例もあります。会社業務に支障が生じるほどの例が起きていないかチェックすることが必要です。もちろん、年齢が高くてもまだまだ壮健で頼りがいがある税理士も沢山います。一概に年齢だけで判断するのではなく、業務遂行能力や判断力が落ちてきていないかを見極めるのが良いでしょう。
対策としては、その税理士に後継者や若いスタッフがいて頼れる場合には、会社の担当者を後継者やスタッフにしてもらうという方法があります。また会社の側から業務改善を伝えて、会計事務所側に対応を促すなどの方法を取るなど、会社が高齢化を懸念しているということを伝達することも重要と思われます。実際、そのような伝達をした際に、税理士側から廃業を伝えられ、引き継ぎ先の税理士の紹介をしてもらったという事例もあります。そのようにスムーズに税理士の引き継ぎをしてもらえる流れになると会社側も安心かと思います。
3. 最新のシステム指導をしてくれているか
昨今では会計システムを中心に税理士がITシステムを活用するのが主流になってきています。一方でITシステムが苦手な税理士も多く、会計システムのバージョンアップについての説明指導が全然できていないといったケースや、ITシステムに関する質問をしても適切な解答が出来ず、結局自身でヘルプデスクに問い合わせた方が早いというケース等が発生していると聞きます。
ITシステムが活用できていなくても業務上、すぐに問題にならないようにも思えますが、最近ではITシステムの発達がめざましく業務効率に直結する為、これらを放置することは経営問題とも言えます。経理人材がシステムを使いこなせないままの状態を放置すると、人材育成や労働生産性、経営管理に悪影響がでて、競争力の低下・金融機関からの信頼性の低下、などを引き起こす恐れがあります。
また、最近は、会計・給与・販売・固定資産・銀行システムなどのシステム連携が発達し、システム間の連動により仕訳を自動生成するといった形で、経理のIT化は進歩し続けています。2023年に導入されるインボイス請求書制度になると、請求業務・入金支払業務についても電子化が進みますので、ますます経理のIT化対策は重要になります。さらに、ITシステム投資に関する補助金申請なども税理士事務所の支援が必要な場合があり、ITニーズに対応した税理士でないと、今後も様々な問題が発生しうるという事は認識しておくべきでしょう。
上記のようなケースについて、会社としてできる対策としては、税理士がITに強くなるのは一朝一夕では難しいため、会計システムベンダーのヘルプデスクと直接やり取りするなど、会社から情報を取りに行くことが対策になるのではないかと思います。積極的に会計システムベンダー担当者に関わってもらうなどの工夫をしていくことが必要だと考えられます。またそれでも問題解決しない場合には、ITに強い税理士を探してみることも対策になるでしょう。
4. 税務調査で会社の立場から主張してくれているか
税務調査で税理士が会社側の立場に立って主張をしてくれなかった、という不満を聞くこともあります。会社側としては、税務署からの指摘に対し、何らかの言い分や主張がある論点もあるでしょうから、税務代理人として税務署へ意見し交渉をして欲しいというのは当然です。もし顧問税理士が税務署側の意見ばかりを尊重する場合には、すぐに修正申告となってしまい、会社としては著しく不利となります。顧問税理士がこういったタイプの場合、修正申告により思わぬ納税負担が生じたり、延滞税や重加算税を負うことにもなりかねません。
会社が取りうる対策ですが、まずは顧問税理士に会社側に立った意見や主張をするようきちんと指摘した方が良いです。それでも顧問税理士が意に沿わない場合には、セカンドオピニオンとして、税務調査に強い別の税理士に依頼する手があります。会社の顧問税理士が1人でなければならない制限はありませんので、セカンドオピニオン税理士とも契約をして税務調査対応だけ依頼することなども可能です。セカンドオピニオン税理士が税務署に対して「税務代理権限証書」を提示することで税務署側も税務代理人として認識でき、話をすることが可能となります。税務代理権限証書とは、税理士が税務代理をする場合にその権限を有することを証する書面であり、「代理人が複数いる場合における代表する代理人」などを記載する欄があるほどですので、セカンドオピニオン税理士が登場しても何ら問題はありません。会社としては新たな視点や税務上の理解が進む場合があり、良いきっかけにもなり得ますし、税理士にも得意分野・不得意分野がありますので、どうしても今の顧問税理士が頼りない状況があった場合には、セカンドオピニオン税理士を探してみるのは、選択肢として持っておくのが良いと考えます。
5. 会計や会社法が分かっているか
税理士試験では、原価計算やキャッシュ・フロー会計、会社法などは、試験の範囲外となるため、これらをサービス範囲としている税理士は少ないのが現状です。しかし、製造業や建設業などでは原価計算の知識や建設業経理システム等を活用することが必要となっており、原価計算の知見がない顧問税理士だと、誤った計算を指導して業績管理上の問題を引き起こしてしまうケースがあり得ます。また、会社法の基本知識がない税理士の場合、株式や資本、総会手続きなどの対応を苦手としている事が多く、それらに関する情報提供やアドバイスができてないケースもあります。
実際に、住宅販売業にも関わらず、期末の未成工事支出金や完成工事原価を個別法ではなく総合原価計算のように計算してしまっていたり、原価と販管費の区分が明らかに間違っていたり、原価差異の期末棚卸資産への配賦計算が間違っていたりといった事例は現実に起きています。また、会社法制定により自己株式が貸借対照表の資産の部から純資産の部に変更になったにも関わらず、長年にわたり資産の部に計上し続けていたり、退職給与引当金が税法で廃止となった際に引当金を取り崩してしまい簿外債務を作ってしまったりと、いった問題を起こしている事例も実在します。ある会社では、10年間で5回も会計事務所を変えたにも関わらず、適切な原価計算指導を受けることができず、金融機関からも指摘をされてしまっているようなケースがありました。
上記のようなケースに対する、会社の取りうる対策としては、公認会計士である税理士を探すことです。公認会計士であれば、試験科目として原価計算やキャッシュ・フロー、会社法がありますので、企業財務の全般に渡り知見がありますし、監査法人において上場企業の原価計算等の現場実務を見てきていますので、中小企業の指導もしっかりできるかと思います。なお、製造業や建設業でかなり現場的な部分、あるいは経営改善分野については、業種専門のコンサルタントを探すことも有効です。コンサルタントには、得意分野が様々ありますので、品質管理だったり、事業再生だったりと、ニーズに応じて探すのが良いと考えられます。
税理士変更時のチェックポイント
ここまで、税理士変更を検討する場合のチェックポイントについてご説明してきましたが、ここからは、実際に顧問税理士を変更する場合に注意すべきポイントについてご説明します。
(1) 税理士変更に伴う会計システムの変更
顧問税理士を変更とすると、一緒に会計システムを変更することが多いですが、その際のシステム移行が想定外に大変だったという事例は多いですので、注意が必要です。たとえば、前の税理士がシステムに疎く、システムデータのCSV出力を依頼しても、その方法が分からない等の事象が発生すると、データが入手できずシステム移行に影響してきます。会社の財務に関するシステム資産を顧問税理士が所有してしまっていると、このような問題が発生してしまいますので、会社でシステムを管理したり、税理士からバックアップデータやCSV出力データを随時に納品してもらうよう注意した方がよいと思います。また、TKC会計システムの場合には、使い続ける場合にでも事務所コード移管が必要となり、コード移管に手間取る場合がありますので、時間に余裕をもって対応することが良いと思います。
(2) 税理士変更は期中か期末か
顧問税理士の変更タイミングに悩むケースも少なくありません。期末近くの場合、決算申告を前税理士に依頼しておき、期首から新しい税理士に切り替えることが考えられます。この場合、決算申告中の2ヵ月間については税理士の顧問料が2重に発生する場合もあります。期末で税理士変更するメリットは、会計システムデータの引き継ぎがスムーズな点です。前期については前の会計事務所が仕訳データを完成させ、今期については新しい会計事務所が仕訳完成させていくため、役割分担が明確ですし、申告期限もあり仕訳納品がスムーズになりやすいと思います。
一方で、期中での税理士変更も可能です。期中での税理士変更の場合には、期末まで待ったりする必要がなく任意のタイミングで税理士変更できる点がメリットです。一方で、期中の会計データを前会計事務所と共に作成している場合、その会計データを納品してくれなかったり、中身が著しく問題があったり、会計システムを変更するような場合には、新しい会計事務所が期首から会計データをやり直し作成するデメリットが生じます。半期も過ぎている場合には、この会計データの取り扱いがややポイントになってしまう場合があります。ただ、作業の手間はあるにしても、期中での税理士変更ができないわけではありません。期中の変更は出来ないのではないかと思いこんでいる経営者の方もいらっしゃいますが、期中での税理士変更は特別イレギュラーな事ではありません。
(3) 給与システムなど他サービスの変更
給与システムや、FinTechなどの外部連携サービスを使っている場合に、税理士変更に伴ってシステム変更することになると、移行手続きでどれくらいの手間がかかるのか注意が必要です。期中移行だと手間が相当かかる場合には、一部のシステムは次年度に移行するなどスケジュール調整をする必要があるでしょう。
なお、システムに強い税理士に変更する場合には、移行作業にも強いと思われますし、新システムに切り替わった後には、従来使っていなかったような新ツールの指導や案内をしてもらえますので、結果的には生産性向上に繋がり、満足度が高まる可能性があると思われます。
(4) 電子申告の利用者識別番号
税務署への電子申告等の際に使う利用者識別番号を前税理士が保有しており、会社が知らないケースは多いです。税務署からの連絡などがメッセージボックスに格納されており、税務申告において参考情報となることから、できれば引き継いだ方が良いと思われます。税理士変更する場合には、ぜひ前税理士から利用者識別番号(国税・地方税)を引き継いでもらうよう手配しましょう。
ここまで本記事では、顧問税理士の変更を考える上でのチェックポイントについて書いてきました。どのような税理士と付き合うかで、会社経営や人材育成にも大きな影響を与えます。いまの税理士のままで大丈夫かな?と少しでも思った場合には、セカンドオピニオン税理士などを探して行動してみると良いでしょう。
無料相談承ります
税理士法人山岸会計では上述のような顧問税理士の変更の相談に乗っております。初回相談は無料でお受けしておりますので、もし「セカンドオピニオン税理士を探してみたい」というお気持ちがおありでしたらお気軽に一度ご連絡頂けますと幸いです。
※相談したからといって弊事務所に顧問税理士を依頼する必要はございません。